記憶に残った旅や本、そして映画などなど

これまでの旅やら読書やらでいつまでたっても記憶に残っているものを紹介します

無銭優雅 (山田詠美/幻冬舎文庫)

この本を買ったのはいつのことだったか。確か、長年西荻窪に住んでいる友人を訪れ、西荻窪を案内してもらっている中で見つけたフリーペーパーで紹介されていたから読んでみようと思ったのでした。帰りの新幹線で読もうと思って買ったものの、爆睡してしまったためにしばらく積ん読になっていたような気がします。

 その時初めて訪れた西荻窪は、友人が気に入って長年住むのもわかる街でした。だから、西荻窪を舞台にしたこの本を読んでみようと思ったのでした。

 

 主人公は、花屋で働く慈雨(じう)。慈雨の恋人は、西荻窪に住む予備校講師の栄(さかえ)。ふたりとも40歳を過ぎているのに結婚はしていません。40過ぎのいい大人の会話がこんなんでいいのだろうか、と思うほど子供っぽく、それがまた微笑ましい。

 ただ、私は栄のような人には近づかないだろうなぁ。ここまで作り話で固めた人、許す気にはならないだろうな。そう考えると、主人公である慈雨も大概変わった人だよなあ。

 でも、読んでいくうちに慈雨の考え方やセリフに共感できるところもたくさんありました。例えば友達元気で留守が良い。もともと私は一人でいる方が気が楽です。一緒になくては友情は育めない、という考え方はうざったいというか面倒だなと思ってしまうのです。自由に行動させてくれてお互いの都合が合えば会う、そういった友人に恵まれて私は幸運だと心の底から思います。

 

 話の中で、何の義務もない勉強について慈雨が考えている場面がありますが、最近フランス語の勉強を始めた私にとってもタイムリーなテーマ。世の中で言うところの勉強と呼ばれるものとは無縁のものを学ぶことは、大人になるととても楽しいもの。でもまた、慈雨は考える。大人にあるのは時間の制限だ、と。本当にそう思います。時間っていくらあっても足りない。

 

 ラストの方で慈雨の父親がなくなるのですが、「仏さんを怖くないと感じる時、人は、その人を愛していると知るのだと実感した」と慈雨は語ります。全くその通りで、私も父親が亡くなった時、自分でもびっくりするほど悲しくて泣いたのに、怖いとは全く感じなかったな、と何年も前のことを思い出しました。

 

 ついでに、サトウのメンチコロッケ、東京に住んでいる時に食べるんだったな。

 

無銭優雅 (幻冬舎文庫)